25枚の処方箋

健康で文化的な最低限度の生活を営むための月25枚の処方箋

企業でストレス診断が義務付けの方針

厚生労働省は企業に対し、従業員へのストレス診断を実施するよう義務付ける方針を決めました。現在、国会に労働安全衛生法改正案を提出している最中で、2015年度中の実施を目指します。はたして、心の病の予防と、早期対処に効果を発揮するのでしょうか。

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ストレス診断は、従業員にうつ病などのサインに気づいてもらうための施策です。ストレス診断でうつ病の兆候が見られた社員に対して、企業は治療や職場復帰を支援し、職場環境の改善を図ります。この診断を定着させようという厚労省の狙いは理解できます。

診断内容について、具体的には、年に1回医師か保健師が質問票を用いて、従業員の疲労度、不安感などを評価します。本人が希望すれば、医師の面接指導を実施できるそうです。この時、勤務の負担を減らす必要があると医師が判断した場合、企業側に配置転換や労働時間短縮といった対策を求める仕組みとなっています。

長い目で考えれば、企業側としても、働き盛りの従業員が症状の悪化により職場を離れれば、今後の生産活動に響く事は間違いありません。心の健康対策は、社会や経済の損失を減らすためにも大変重要な取り組みです。現在、これらの損失額は年2.7兆円に上るとの試算もあります。

しかしながら、ちょっと使い方を間違えると、従業員のふるい落としに使われてしまうリスクもありそうなので、施行は慎重に実施してほしいところです。

また、ストレス診断の義務付けには課題も多いです。

診断の対象は雇用者全体に及び、約5500万人に上ります。診断を実施するには、産業界全体で1回につき100億円単位の負担が生じると言われています。コストに比べ、どの程度の効果があるのか。法案審議では、その観点からの議論が求められるでしょう。

 

加えて、面接指導を行う医師の確保も課題の1つです。現在、従業員へのメンタルヘルスケアを実施している企業は47%にとどまっています。産業医のいない小規模な企業では、特に対策が遅れているのが現状でしょう。実施に向けて、産業医の資格を持つ開業医が中小企業の「かかりつけ医」となるように促すなど、厚労省は企業の対策を後押しすべきでしょう。

産業医らが企業に心の健康対策を助言するため、各都道府県に設置されている「メンタルヘルス対策支援センター」を有効に機能させることも必要です。うつ病を発症し、休職した場合の援助も大切。うつは再発しやすく、スムーズに職場復帰できるとは限らないからです。臨床心理士らが休職者にカウンセリングを行い、成果を上げている企業もあるため、そのノウハウをうまく取り入れて、普及させていきたいところですね。